女給が変ると、客種も変り、新聞社関係の人がよく来た。新聞記者は眼つきが悪いからと思ったほどでなく、陽気に子供じみて、蝶子を呼ぶにもマダムでなくて「おばちゃん」蝶子の機嫌はすこぶる良かった。マスターこと「おっさん」の柳吉もボックスに引き出されて一緒に遊んだり、ひどく家庭的な雰囲気の店になった。酔うと柳吉は「おい、こら、らっきょ」などと記者の渾名を呼んだりし、そのあげく、二次会だと連中とつるんで今里新地へ車を飛ばした。蝶子も客の手前、粋をきかして笑っていたが、泊って来たりすれば、やはり折檻の手はゆるめなかった。近所では蝶子を鬼婆と蔭口たたいた。女給たちには面白い見もので、マスターが悪いと表面では女同志のひいきもあったが、しかし、肚の中ではどう思っているか分らなかった。 蝶子は「娘さんを引き取ろうや」とそろそろ柳吉に持ちかけた。柳吉は「もうちょっと待ちイな」と言い逃れめいた。「子供が可愛いことないのんか」ないはずはなかったが、娘の方で来たがらぬのだった。女学生の身でカフェ商売を恥じるのは無理もなかったが、理由はそんな簡単なものだけではなかった。父親を悪い女に奪られたと、死んだ母親は暇さえあれば、娘に言い聴かせていたのだ。蝶子が無理にとせがむので、一、二度「サロン蝶柳」へセーラー服の姿を現わしたが、にこりともしなかった。蝶子はおかしいほど機嫌とって、「英語たらいうもんむつかしおまっしゃろな」女学生は鼻で笑うのだった。 高級デリヘル 相手の無い喧嘩はできない